もう30年は昔の話です。アメリカのＴＶ番組に登場したカスタム・ガンに、私はノック・アウトされてしまいました。
『００１１ ナポレオン・ソロ』と言うその番組の中で、主人公達“ＵＮＣＬＥ”の捜査官が携帯する短銃身のワルサーＰ．３８には、必要に応じていろいろなアタッチメントを装着することができ、特に、着脱銃床、テレスコープサイト、ロングサイズマガジン、そして延長銃身とマズルブースターシステム（なんじゃこりゃ）を装着した狙撃銃タイプのかっこよさは多くの人々の心をつかみました。
銃身の交換ならともかく延長、なんて可能なのか、そんなんで狙撃して命中するのか、とか、実用性に疑問の残るカスタムではありますが、拳銃がアタッチメント装着で強力な武器に変貌する、と言うインパクトは、後の合体変身ロボットにも通じるものがあって私のツボにはまってしまいました。以後、“組立式”は私のキーワードとなってしまい、トイガンのみならず、合体するものにはなんでも反応してしまいます（笑）。

番組放映当時は初期のモデルガンブームと重なり、ＭＧＣと中田商店から、モデルガンが発売されました。



ＭＧＣ製のアンクルスぺシャルは、引き金を引くとスライドが後退して排莢する、言う所のタニオ・アクションであり、グリップ背部のハンマーストラットが必要ない事を利用してこの部分にストック装着部を、トリガーバーが必要ない事を利用してこの部分にスコープ固定用のネジが切ってありました。
ＭＧＣのタニオ・アクション式金属製Ｐ．３８にはミリタリータイプもありましたが、ＭＧＣは標準型であるミリタリータイプよりもアンクルスペシャルの発売を優先させたといいます。市場での人気がうかがえますね。
アタッチメントは、ＴＶ番組の設定に従い、銃床、ロングサイズマガジン、テレスコープサイトとスコープマウントベース、延長銃身、鳥篭型マズルブレーキ、となっていました。４６規制で本体の銃口がふさがれると、延長銃身を取り付けるジョイントが追加され、タニオ・アクションであった為に５２規制を生き延びて販売は続けられていましたが、１９８０年頃製造販売が中止され、ＭＧＣアンクルはカタログから消えました。



私ははじめ、タニオ・アクションがあまり好きでなかったことと、本体の仕上げの悪さを嫌ってなかなか購入する気になれませんでした。銃床とスコープだけは、モーゼルに装着するために持っていましたが、だいぶ後になって本体を購入、その時には残念ながらアタッチメントの多くが入手できませんでした。写真のモデルは、入手できなかった延長銃身を自作してなんとか格好を整えたものです。スコープマウントベースも当初自作でしたが、今年１月のブラックホールで入手できました。ロングサイズマガジンは、昨年夏、ＮＩＦＴＹ友達の夜魔猫さんが自宅から発掘してプレゼントしてくれた貴重品。感謝です！


一方、中田商店の製品は、実銃に近いメカニズムを持った本格派で、そのため銃床とスコープはグリップに装着するようになっていました。これが考証的に正しい構造なのですが、中田のアンクルはこのグリップが弱点でした。プラスチック製で壊れやすく、このモデルガンを構えてスラッシュの基地に突入すると銃床の付け根から“バキン”と折れてしまいそうです。また、小道具のアンクルタイプの本体には銃身の切りつめと角の削り落しが施されていて、ＭＧＣの製品ではこの雰囲気が再現されていたのに中田製では銃身の切りつめすらなく、同社のミリタリータイプ、コマーシャルタイプとの外見上の違いはグリップのみ、と言うちょっと手抜きの印象がありました。
銃床には伸縮機構があり、ＭＧＣ製の銃床よりも凝った作りになっています。また、中田製アタッチメントにはＭＧＣにはないバイポッドが含まれていました。これはこれで雰囲気があるのですが、ショートリコイルする銃身にバイポッドを付けてどうするんでしょうか？（苦笑）
中田商店がモデルガンの製造をやめてからは、金型を引き継いだマルシンがＰ．３８を生産しましたが、当時のカタログにはアンクルタイプのグリップを装着した本体のみ記載され、アタッチメントは載っていませんでした。ただ、モデルガンショップの雑誌広告にはアタッチメントをフル装備したアンクルスペシャルが掲載されており、中田時代の流通在庫かも知れませんがマルシン時代にも入手可能な時期があったようです。ＭＧＣ製とは異なり、こちらのモデルガンの構造は５２規制に抵触するため、規制の施行とともに市場から姿を消してしまいました。



私が、新品のモデルガンをお店で買えるようになったのは大学に入学し、アルバイト等で多少小遣いに余裕が出てからでした。さっそく中田商店（マルシン）のＰ．３８アンクルを探しましたが時すでに遅く、５２規制施行直前。地方に住んでいたせいもあって入手することはできませんでした。



その後、仕事で上京したおりに偶然立ち寄ったショップで銃床とグリップを入手、現在はこれをマルシンのプラ製モデルガンに装着してあります。設計上の共通点があるのか中田のアンクル型グリップは僅かな加工でマルシン・プラ製に装着できます。テレスコープサイトを購入してスコープマウントベースを自作し、自作の延長銃身を装着したものが写真の品物です。ロングサイズマガジンも、２本のマガジンをつなぎあわせて自作しました。
写真のような収納ケースを自作し、古いアタッシェケースに収納すると、“秘密兵器”のムード満点。時々取り出して組み立てると不敵な笑みがこぼれます。ああ、あぶない。
(1999/07/02)





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